2022年6月20日
鬼才デビッドバーンが導く、どこでもないどこか…
by Koyama DDS

チェーンのカーテンに仕切られたスクエアのステージ、グレーのスーツを身に纏った12人パフォーマー。シンプルを極めた舞台は彼らの存在を際立たせた。
場所はブロードウェイ'ハドソンシアター'、初めてのNY旅行は、到着後二日目でハイライトを迎えることとなった。
MCを挟みながらテンポよく進む展開、斬新なマーチングバンドスタイル、優れた演出と照明、最高の演奏技術と音響の中、「皆んな俺の家においでよ!」と歌うデビッドバーンの懐に、全てのオーディエンスが招き入れられた。
彼がフロントマンして一世を風靡した、トーキングヘッズの代表曲'Burning Down The House'では劇場全体が揺れる程、皆が踊り狂い。パンチのあるアフロビートのプロテストソングに痺れ。ラストの'Road To Nowhere'では全員マーチングバンドのレーンに連なっている様な感覚を覚えたであろう。
ただのミュージカルではない、コンサートでもない、どこでもないどこかに自分が導かれる未体験の感覚を味わう奇跡のステージ。
目の前でDバーンが'Burning~'のイントロを弾いた時には、歓喜の涙を抑える事が出来なかった。隣に娘いるにもかかわらず…
ユーモアを織り交ぜながら彼は語りかける。みんな投票に行って国を変えていこうぜ!多民族のメンバーってこんなに素晴らしいだろ!理不尽な死に方をしたブラックピープルを胸に留めておこうぜ!
マーチングバンドはユートピアへの道へ誘う羅針盤となったのだ。

好評を博したショーはコロナの影響で休止を余儀なくされた。会場近くのタイムズスクエアが無人状態となり、ユートピアがデストピアに変貌した衝撃にもめげず。Dバーンはスパイクリーという朋友の力を借りて、この偉大なるショーの映画化に漕ぎ着けた。
彼が望んだ大統領選挙は空前の投票率を記録したが、不正投票や電子投票システムの問題を曝け出し、加担したBLMはマルクス主義的アジェンダの下、都市が燃え、警察組織は弱体化し治安は悪化、より多くの黒人が死んだ。そして映画はまたもやコロナの影響を受けて、劇場の公開が中止となり配信で配給されるという憂き目に憂き目に遭う事となった。
それでも尚、理想郷を目指して彼はペダルを漕ぎ続けるだろう。ユートピアへの険しく長い道のりを。
どこへ行くのかは分かっても
どこから来たのか誰も知らない
何を知ってるかは分かっても
何を見たのか誰も言えない
僕達は子どもじゃない
何を欲しいか分かっているさ
未来は必ずやってくる
答えを出すため、少しだけ時間が欲しい
"Road to Nowhere" 1985
